社長の給料はいくらが正解?|役員報酬の決め方と、銀行・従業員からの見え方

公認会計士・税理士 丹沢祐介

この記事を書いた専門家

丹沢 祐介公認会計士・税理士

  • 元 財務省
  • 4大監査法人出身
  • 外部CFO

国土交通省・財務省主計局で行政実務に携わったのち、大手監査法人で会計監査・内部統制支援を経験。現在は外部CFOとして、開業から事業拡大まで訪問看護ステーションに伴走するほか、全国の中小企業の資金調達・経営を支援している。

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「自分の給料、いくらにすればいいんだろう」。会社を経営していると、毎年のように悩むのが社長の給料、つまり役員報酬です。

高くすれば手元のお金は増えますが、そのぶん会社に残るお金は減ります。低くすれば会社に利益が残りますが、今度は生活が苦しくなります。この記事では、役員報酬を決めるときの考え方を、税金、銀行、従業員という3つの目線もふまえて解説します。

役員報酬は「今年、会社で何をしたいか」から決める

役員報酬を決める順番。1 利益の見込み、2 今年の投資、3 会社に残すお金、4 役員報酬(1〜3を踏まえて残りから決める)、5 社長の生活費(決めた報酬の中でやりくりする逆算)

役員報酬を決めるとき、多くの社長は「生活にいくら必要か」から考え始めます。でも、順番は逆です。

まず考えるのは、今年の利益の見込みと、会社に残すお金です。そして、その前提になるのが「今年、会社で何に投資したいのか」。人を採用したいのか、設備を入れたいのか、新しい拠点を出したいのか。やりたいことによって、会社に残しておくべきお金は大きく変わります。

会社に必要なお金が決まって、はじめて役員報酬の額が決まります。社長の生活費は、その決めた報酬から逆算して考える。この順番を守ることで、会社の成長に必要なお金を確保しながら、無理のない報酬を決めることができます。

役員報酬は、年の途中で変えられない

3月決算の例。役員報酬は期首から3か月以内に決め、決めた額を毎月同じように支払う。年の途中で上げ下げすると、その分が会社の経費にならないことがある。業績が大きく悪化した場合など例外もある

役員報酬には、知っておきたい大事なルールがあります。原則として、事業年度が始まってから3か月以内に金額を決め、その年は毎月同じ額を支払う必要があります。

年の途中で「思ったより利益が出たから上げよう」「苦しいから下げよう」と変えると、その分が会社の経費として認められないことがあります。業績が大きく悪化した場合など例外もありますが、基本は1年間変えられないと考えておきましょう。

だからこそ、期首の時点で今年の利益と投資の見込みを立てておくことが大切です。役員報酬は、1年に1回の大事な経営判断なのです。

根拠:法人税法第34条第1項第1号(定期同額給与)、法人税法施行令第69条第1項第1号(事業年度開始から3か月以内の改定、臨時改定事由、業績悪化改定事由)

税金で見ると、会社に残すほうが有利なことが多い

所得税と住民税を合わせた税率は、課税所得が増えるほど上がる。195万円以下は15%、330万円以下は20%、695万円以下は30%、900万円以下は33%、1,800万円以下は43%、4,000万円以下は50%、4,000万円超は55%

個人にかかる所得税は、所得が増えるほど税率が上がる仕組みです。住民税と合わせると、所得が大きくなるにつれて、増えた分にかかる税金の割合はどんどん重くなります。さらに、役員報酬が上がれば、会社と社長の両方が負担する社会保険料も増えます。

一方で、会社の利益にかかる税金の割合は、個人ほどは上がっていきません。会社が成長していて、そのお金を次の投資に回し続けるのであれば、役員報酬を上げすぎずに会社に残しておく(内部留保する)ほうが、税金の面でも有利になることが多いのです。

もちろん、会社に残したお金は社長個人のお金ではありません。会社の成長のために使うお金として、計画的に残していくことが前提です。

高すぎても、低すぎてもいけない

役員報酬が低すぎると、社長の生活が回らず、下げて出した利益も銀行は見抜いている。高すぎると、会社にお金が残らず、銀行が不安を感じ、従業員の気持ちも離れる。ちょうどよい報酬なら、会社に必要なお金が残り、社長も生活でき、会社と一緒に上げていける

役員報酬は、高すぎても低すぎても問題があります。

高すぎる場合、まず気をつけたいのが銀行と従業員の目です。従業員の中には「自分たちが頑張って稼いだのに」と感じる人がいるのも事実です。社長の報酬が会社の稼ぎに比べて高すぎると、従業員の気持ちが離れてしまうことがあります。

低すぎる場合も問題です。社長の生活が回らなくなっては、経営に集中できません。また、役員報酬を下げて利益が出ているように見せても、銀行はそれをきちんと見ています。

銀行は、役員報酬をこう見ている

報酬が高すぎる会社は、返済に回すお金や会社に残すお金を社長個人に移していると見られ、銀行は不安を感じる。報酬を下げて利益を出した会社は、報酬を適正な額に戻すと赤字になる場合、稼ぐ力は弱いと見られる。銀行が貸すのは社長個人ではなく会社

融資を考えるうえで、銀行が役員報酬をどう見ているかは知っておきたいところです。

まず前提として、銀行がお金を貸すのは社長個人ではなく、会社です。役員報酬が高すぎると、本来は借入れの返済に回すお金や会社に残すお金を、社長個人に移していると見えてしまいます。銀行としては、貸したお金がきちんと返ってくるのか不安が高まります。

反対に、役員報酬を低くして利益を出していても、銀行はその報酬が適正かどうかを見ています。報酬を世間並みの額に戻して計算し直したときに赤字になるようなら、「この会社の本当の稼ぐ力は弱い」と判断されます。

理想は、会社の成長に合わせて上げていくこと

1年目から5年目にかけて会社の利益が伸び、役員報酬も利益に合わせて段階的に上がっていくイメージ

役員報酬の理想は、会社の成長に合わせて、段階的に上げていくことです。会社の利益が伸び、会社に必要なお金がきちんと残るようになったら、そのぶん報酬も上げていく。会社と社長が一緒に成長していく形が、銀行にも従業員にも納得してもらいやすい形です。

特にベンチャー企業では、従業員よりも低い報酬で頑張っている社長も少なくありません。最初は会社にお金を残して成長を優先し、会社が大きくなったら報酬で報いる。そうした考え方も、立派な経営判断の一つです。

まとめ

役員報酬を決めるときに押さえておきたいのは、次の5つです。

  1. 利益の見込みと今年の投資から、会社に残すお金を先に決める。生活費は逆算で考える
  2. 役員報酬は、原則として期首から3か月以内に決め、1年間同じ額にする
  3. 会社が成長して投資を続けるなら、会社に残すほうが税金の面で有利なことが多い
  4. 高すぎると銀行と従業員の目が厳しくなり、低すぎても銀行は本当の稼ぐ力を見ている
  5. 理想は、会社の成長に合わせて段階的に上げていくこと

役員報酬は、社長自身の生活だけでなく、会社の成長や銀行との関係にも関わる大事な判断です。顧問税理士に何をどこまで相談できるかについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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